四 阿 茶 寮

散慮逍遥の番外編です。
四阿茶寮トップページ
.......................................................................................................

【過去の記事】
2004年09月
2004年08月
2004年07月
2004年06月
2004年05月
2004年04月
2004年03月
【分類】
Weblog
題詠マラソン
【リンク】
題詠マラソン2004
題詠マラソン鑑賞サイトアンテナ
夢現間隙

【完走者五首選・070.村本希理子さん】

・070.村本希理子さん

011:犬 もうゐない犬のかたちをなぞりつつひかりの中をうごけずにゐる
015:蜜柑 冷蔵庫に蜜柑ジュースを常備する愛媛のをとこと三月暮した
021:胃 後悔をにれがむための胃は持たぬ わたし鋏はうまく砥げます
073:廊 回廊の角を曲がつたとこあたり?戦争がいま立つてゐるのは
080:縫い目 「縫い目にも性格が出る」おかあさん、それはわたしが嫌ひつてこと?

「面白い方向」を目指しているのだろうと思う歌(田中庸介氏の言う「面白ぶり」)が目立ったが、その意図が見え過ぎている感じがして五首には残せなかった。//
2004年09月15日 牧野芝草
コメント(0)/ トラックバック(0)
.......................................................................................................
【【荻原裕幸さん・4】】

---------------------------------------------------------------------
031:肌 肌よりもまぶしいものをきらめかせ夏の汀を見てゐましたね

「まぶしいものをきらめかせ」の平仮名が光を反射する水面のように見える(横書きだからか?)。
「今」を否定しているわけではないものの、失われた「時」(=若さ?)を懐かしむせつなさが痛い。

 *

032:薬 薬包紙ひらくそのたび異なつたかたちで今日が咲いてゐること

薬包紙に包まれた散剤を処方されることはおそらく最近はあまりないためか(私がここ数年でそのような形態の薬を処方されたのは耳鼻科で渡された頓服だけで、しかも結局のまなかった)、薬包紙に包まれた薬は貴重な(希少な)ものであるような印象を与える。
そのような「薬包紙」(の包み)を「ひらく」こと(しかも開かれたあとの折りあと(折皺?)はいつも「異なつ」ている)=「今日」だというのだ。
「今日」というものの無二性(?)をこんな比喩で表せるとは。

 *

033:半 四畳半の半のあたりでみづいろの羽根からとどく風を見てゐた

「四畳半」が喚起する侘びしさに加え、「四畳半の半のあたり」の中途半端さと「風」を送ってくる「みづいろの羽根」(=扇風機)のどこかレトロな雰囲気から、場面は昭和の夏のように思える。
「剥きあへば蜜柑の匂ふ圏内に」([015:蜜柑])の夏版と思ってしまうのは早計か。

 *

034:ゴンドラ ひとりひとりゴンドラに乗る薄闇のそこをこころと呼ぶのか迷ふ

「ひとりひとり」で「ゴンドラに乗る薄闇」は、アーサー王の伝説の最後の場面を思い出させる。

 *

035:二重 すべて、ここに、霧も、轍も、さう言つて紫紺の二重封筒を切る

クラフト・エヴィング商會的(AZOTH的?)あるいは『ボヘミアの醜聞』的なイメージの歌だ。
前半の「、」は切れ目を暗示しているのだとは思うが、少し煩わしいような気もする。

 *

036:流 さまざまな明日を謂ふのに流体の範囲を出ない比喩をならべて

「立て板に水」という慣用句の新しい表現法。
「比喩」が嘘や香具師の口上に近いものであるように思えてしまうのは、↓の歌のせいだけではないだろう。

 *

037:愛嬌 愛嬌のない人魚だつたとはなつから嘘とばかりも言へぬ口調で

人魚とはそもそも愛嬌のあるものだろうか、という疑問が湧く。

 *

038:連 一連のできごとであるのを誰か気づかないのかひまはりが咲く

「一連のできごと」であることを指摘しないのであれば、「気づかない」のと同じだし気づいていない人に気づかせることもできない。
遠回しな時事詠であるように思える。
結句で一気にドライな雰囲気になる。

 *

039:モザイク 母の顔…だつた…はずだが…遠い夏の卵の殻で描いたモザイク

いろいろに染めた卵殻を使ってモザイク画を描くのは、夏休みの自由工作の定番だった(私が小学生だった頃は)。
そのモザイクが「『母の顔』『だつた』『はずだが』」ということは、意図したのとはまったく違う出来上がりになってしまったのか、数十年の時を経て汚れたり欠けたりしてしまったのか。
初句と二句の語を「…」で区切ることでそれぞれの語をモザイクの一片のように見せているが、モザイクの一片としては大きすぎる気がするので、その点はうーん、と思う(ガウディや小学生の作品の場合、一片は必ずしも小さいものではないことや、一片をあまり細かくしないことではじめて得られる表現があるのも承知の上で)。

 *

040:ねずみ 後日譚といふ感じで日々はながれねずみいろした秋を迎へる

夏の締めくくりとして「秋を迎へる」(この題詠の場合は[031:肌][033:半][038:連][039:モザイク]が明らかに夏。[037:人魚]も?)。
が、その「秋」は「ねずみいろ」なのだ。
作中主体が子どもであるなら宿題が全部片付いたあと=「後日譚」だし、大人の場合を考えるなら「夏期休暇」が終わってからの日々が「後日譚」だろう。

---------------------------------------------------------------------

今回の十首の中で好きだったのは[033:半]と[038:連](わかりやすいのが好きなのか>私(^^;))。(040910)//
2004年09月10日 牧野芝草
コメント(0)/ トラックバック(0)
.......................................................................................................
【完走者五首選・069.翔子さん】

・069.翔子さん

005:名前 父さんの初恋の人の名前なの自己紹介にドラマ幾つも
016:乱 脱ぎ捨ててあとはよしなに乱れ籠いつかは終わる妻の旅路も
021:胃 紹介状渡されていくMRI白いトンネル胃をそっと撫で
056:磨 歯磨きが上手になった三歳児とうもろこしをひたすら囓る
068:傘 黒い傘いくつも並ぶ御堂筋いちょう静かに次の季節へ

斉藤斎藤氏に倣って言えば、数学の問題集の回答ページを見ているような歌(=問いも答えも歌の中に明記されている歌)が多かったと思う。//
2004年09月10日 牧野芝草
コメント(0)/ トラックバック(0)
.......................................................................................................
【完走者五首選・068.稲村一弘さん】

・068.稲村一弘さん

001:空 ヌビア沙漠 祭りに集ふガラベーヤ白きに映る空の青あり
031:肌 シベリアにて工夫せし「クロ」粗々と香月泰男の絵肌しづもる
039:モザイク イスファハン 礼拝堂を埋め尽くす青のモザイク宙(そら)へ導く
074:キリン 朝霧のただよふ埠頭 起重機(クレーン)はキリンのごとく並びて眠る
094:遠 ケニア遠し発ちゆく吾子のうしろよりこれが別れと肩を叩きぬ

グローバルな視点の歌が印象的だった。//
2004年09月07日 牧野芝草
コメント(0)/ トラックバック(0)
.......................................................................................................
【完走者五首選・067.落合和男さん】

・067.落合和男さん

006:土 すたれゆく祠に風がぴゅうと鳴り土着の神がだれか呼ぶ笛
015:蜜柑 汝れと吾の二十本の指染めあげて蜜柑の皮は襤褸となれり
038:連 葉が閉じて別の葉とじてまた閉じて合歓の眠りの連鎖反応
041:血 どのような縁にて吾をえらびぬきわが血を吸うや幽かな虫は
056:磨 高層のビルが闇へと沈む刻 磨崖仏なるひとかげが立つ

ジェンダーについていろいろ考えてしまった。[088:句]から[093:列]までの連作(?)もよかった。//
2004年09月07日 牧野芝草
コメント(0)/ トラックバック(0)
.......................................................................................................
【完走者五首選・066.遊木さん】

・066.遊木さん

005:名前 誰彼が名前をつけているときに世界はすでに革命のなか
043:濃 テルアビブ濃い精液をぶちまけて水で薄めてしゃぼん玉飛ばそ
048:熱 凍りつく私の中で熱力学第二法則が破綻していく
088:句 一句二句七難八苦僕絶句一言半句とくとくすすめ
099:絶唱 世界中小さな声の絶唱が誰にも聞こえず殺されていく

ここにはほとんど残さなかったが、言葉遊びのうまい歌が印象的だった。また、[074:キリン][077:坩堝][094:遠]は私(牧野)の作品への返歌(?)であるような印象を受けたが(094:遠は題詠マラソン2003の[074:キャラメル]への返歌か)、それは自意識過剰というものだろうか。//
2004年08月30日 牧野芝草
コメント(0)/ トラックバック(0)
.......................................................................................................
【完走者五首選・065.落合朱美さん】

・065.落合朱美さん

011:犬 飼い主になぜか似てくる犬の顔我が家のポチはなかなか美形
045:家元 初舞台連なる琴の末端で家元の背を遥かに拝みぬ
086:チョーク 忌まわしき記憶甦(かえ)りし急カーブ君はチョークで地面に描かるる
092:家族 逝きてなほ夕食(ゆうげ)の話題に上りおる愛犬ポチは家族同然
093:列 思い出をドミノみたいに一列に並べてみてるFinの手前で

実体験であるかどうかはわからないが、実体験であってもおかしくないだけの重みを持って響いてくる歌を選んだ。//
2004年08月30日 牧野芝草
コメント(0)/ トラックバック(0)
.......................................................................................................
【完走者五首選・064.篠田 美也さん】

・064.篠田 美也さん

009:圏外 圏外ニ居リマス。春ノ銀河ニテかんぱねるらヲ探シテヰマス。
041:血 放埓な叔父の血でせう弟は胸のどこかに青を飼つてる
060:とかげ なにものも寄せつけぬ目で北を向きとかげは深く思索してゐる
074:キリン あかつきにキリンといへばキのおとに風のみつどがかはりはじめる
086:チョーク この坂にチョークで描きし遠きとほき線路をつたひ来る人と逢ふ

意図したわけではないが、動詞で終わる歌ばかり選んでしまった。歌舞伎の歌をもう少し読んでみたいような気がする。//
2004年08月23日 牧野芝草
コメント(0)/ トラックバック(0)
.......................................................................................................
【完走者五首選・063.原田 町さん】

・063.原田 町さん

010:チーズ あやまちは繰り返しませぬと誓いつつチーズスフレのごとき世界よ
011:犬 ちぎれんほど尻尾ふってる犬われが心のうちにたしかにおりぬ
014:オルゴール もう鳴らないオルゴールに隠しおくわたしのついた嘘のかずかず
042:映画 東映のチャンバラ映画を観にゆきし芝園館の跡はここかと
093:列 整然と列つらねゆく兵たちに過去の父おり未来の子らも

句割れ・句跨がりが気になって選べなかった歌も多かった。日常の小さなことを大事になさる方であるように感じた。//
2004年08月23日 牧野芝草
コメント(0)/ トラックバック(0)
.......................................................................................................
【完走者五首選・062.佐藤羽美さん】

・062.佐藤羽美さん

001:空 青空に映える黄色いシーソーは多分何かの比喩だと思う
015:蜜柑 丁寧に蜜柑の皮を剥く人の約半数は悪人である
036:流 タンポポが一輪川を流れくる地球最後の希望みたいに
083:皮 目を閉じてあなたの皮膚に触れるたび私はきっと液体である
084:抱き枕 抱き枕なんか要らないスコッチを注文できる女ですから

ところどころにあるユニークな一首が面白かった。色名シリーズ五首とどちらにしようか迷ってこちら。//
2004年08月21日 牧野芝草
コメント(2)/ トラックバック(0)
.......................................................................................................
【前のページへ】【】【最新へ】
Powerd by News Handler